リアム・ローソン(Liam Lawson)は、2002年2月11日生まれ、ニュージーランド・ヘイスティングス出身のレーシングドライバーです。F1ではカーナンバー「30」を名乗っています。レッドブルのドライバー育成プログラム出身で、2023年にアルファタウリ(現レーシングブルズ)からF1デビューを果たしました。2024年はRB(後のレーシングブルズ)でレギュラーシートを獲得し、その実績が認められて2025年にレッドブル・レーシングへ昇格。しかし開幕2戦でツノダ敬との入れ替わりが決定し、再びレーシングブルズへ移るという経緯をたどっています。20代前半にしてすでに昇格と降格の両方を経験しており、そのキャリアの浮き沈みの激しさ自体が、彼を取り巻く注目の大きさを物語っています。
ニュージーランドから欧州へ:ジュニア時代の歩み
ローソンは幼少期にカートを始め、ニュージーランド国内で頭角を現すと、より高いレベルを求めて欧州へと活躍の場を移しました。母国のオフシーズンにはトヨタ・レーシングシリーズに参戦し、2019年にタイトルを獲得。このシリーズはニュージーランドで開かれる格式高いフォーミュラカテゴリであり、ここでの実績が彼の名前を欧州のレーシング界に知らしめるきっかけとなりました。
その後はFIA F3選手権へとステップアップし、2021年シーズンにはタイトル争いに加わる強さを見せてランキング3位に。翌2022年からはFIA F2選手権(F1の直下カテゴリ)に舞台を移し、こちらでもルーキーシーズンでランキング3位を獲得しました。F2でタイトルこそ手にできなかったものの、毎年上位に食い込む安定した成績は、レッドブルが抱える若手候補の中でも抜きん出た存在であることを示していました。
レッドブルとの関係と、リザーブドライバーとしての日々
ローソンはジュニア時代を通じてレッドブルの育成プログラムに所属し、F1への階段を上ってきました。ただし、2022年シーズン終了時点でいったんジュニアプログラムの枠から外れるという出来事がありました。それでもチームとの関係は続き、2023年にはアルファタウリおよびレッドブルのリザーブドライバーとしてF1の現場に帯同。フリー走行での走行機会やテストを通じて、F1マシンへの順応を進めていました。
この「正規シートはないが、いつでも呼び出される可能性がある」という立場は、後に彼の評価を決定づける重要な足場となります。レッドブル系チームはドライバー交代の判断が速いことで知られており、リザーブドライバーが急遽レースに出走するケースが続いていたことも、ローソンにとってチャンスをつかみやすい環境でした。
2023年、リカルドの代役としてのF1デビュー
ローソンのF1デビューは、2023年シーズン第13戦オランダグランプリです。当時アルファタウリに所属していたダニエル・リカルドが、フリー走行中のクラッシュで手を負傷し、戦線を離脱。代役として急遽起用されたのがローソンでした。F1レース出走経験ゼロのまま、実質的な準備期間ほとんどない状態で実戦に投入されたことになります。
しかし結果は、周囲の予想を覆すものでした。オランダ、イタリア、シンガポール、日本、カタールと5戦に出場したローソンは、即座にチームメイトと渡り合えるペースを示し、特にシンガポールグランプリでは9位に入賞してキャリア初ポイントを獲得。代役ながら確かな印象を残し、F1レギュラーシートへの有力候補としての地位を固めました。
スーパーフォームラ参戦が生んだ日本との縁
日本のモータースポーツファンにとって、ローソンが身近に感じられる大きな理由が、2023年のスーパーフォームラ参戦です。ローソンはこの年、チーム無限からスーパーフォームラにフル参戦し、F1のリザーブドライバーを務めながらの二足のわらじでシーズンを戦いました。ランキングでは宮田莉朋に次ぐシリーズ2位を獲得しており、日本トップカテゴリでの競争力を証明しています。
この経験は彼のキャリアにおいて二重の意味を持ちました。一つは、F1のシートが決まらない状況でも高いパフォーマンスを維持し続けたことが、レッドブル側の信頼を保つ要因となったこと。もう一つは、鈴鹿やもてぎなど日本のコースでの走行経験が、後のF1日本グランプリにおいても武器となったことです。日本での戦いを通じてファンを増やした点も見逃せず、ツノダ敬との入れ替わりが決まった際には、日本でも大きな関心を集めました。
2024年、待望のレギュラーシート獲得
2024年シーズン、ローソンは当初リザーブドライバーの立場からスタートしました。しかしシーズン中盤、RBはダニエル・リカルドとの契約を終了する決断を下し、アメリカグランプリ以降のレギュラーシートをローソンに託します。ここから彼はシーズン終了までのレースに出走し、限られた機会ながら安定した走りを披露しました。
わずか数戦の実績ではありましたが、リカルドという経験豊富なドライバーと同等以上のパフォーマンスを出せていることは、データ上も明確でした。この結果が、同年末の大きな決断につながります。レッドブルは2025年シーズンのドライバー人事として、セルジオ・ペレスの後任にローソンを起用し、マックス・フェルスタッペンのチームメイトとしてレッドブル・レーシングに昇格させることを発表しました。F1デビューからわずか1年余りでの頂点チーム昇格は、彼の才能に対する期待の大きさを示すものといえます。
2025年、開幕2戦でのツノダ敬との入れ替わり
2025年シーズンは、ローソンにとって波乱の幕開けとなりました。フェルスタッペンと同じチームで走ることは多くのドライバーにとって憧れであると同時に、F1で最もプレッシャーの大きいポジションの一つです。ピエール・ガスリーやアレクサンダー・アルボンのように、このシートで苦しみシーズン途中でチームを離れたドライバーも少なくなく、セカンドシートの難しさは以前から指摘されていました。
ローソンもその例外ではありませんでした。開幕戦オーストラリア、第2戦中国と、予選・決勝ともに目標とする結果に届かず、苦しいスタートとなりました。そして日本グランプリを前に、レッドブルはローソンとレーシングブルズのツノダ敬の入れ替えを発表。ローソンは開幕からわずか2戦でレッドブルのシートを離れ、再びレーシングブルズへ戻ることになりました。
わずか2戦での降格は、近年のF1でも非常に異例の早さであり、その判断の是非をめぐっては国内外で大きな議論が起こりました。一方で、レッドブルのセカンドシートが過去のドライバーたちを苦しめてきた歴史を踏まえれば、問題の多くがドライバー個人の能力だけに起因するものではないという指摘もあります。いずれにせよ、この決定はローソンのキャリアにおける重大な分水嶺となりました。
ドライビングスタイルと評価
ローソンの最大の強みとされるのが、環境への順応力です。F1レース未出走のまま代役デビューして入賞を記録したこと、スーパーフォームラとF1のリザーブを兼任しながら高いレベルを維持したことなど、準備期間の少なさを成績で覆す実績を複数持っています。オーバーテイクの際には果敢な攻めを見せる一方、ペース管理の面でも成熟した判断ができると評価されており、ウェットコンディションでの強さについても定評があります。
年齢的にまだ若く、伸びしろが大きい点もポイントです。F1での総出走数が少ない段階でここまでの結果を残しているため、経験を積むほど安定感が増す可能性を秘めています。チーム関係者や解説者からは、プレッシャー下でも物おじしないメンタルの強さと合わせて、順応性の高さが繰り返し取り上げられてきました。
今後の展望
2025年時点で20代前半のローソンにとって、レーシングブルズのシートは再起の絶好の場所です。レッドブル系チームはシーズン中のドライバー交代も辞さない組織であり、これはリスクであると同時に、結果を出せば即座に上位チームの座が再び射程に入るというチャンスでもあります。レッドブル昇格時に示せなかったパフォーマンスを、プレッシャーが相対的に少ない環境で取り戻し、再昇格を勝ち取ることが当面の目標になるでしょう。
ニュージーランドは、インディカーで頂点に立ったスコット・ディクソンや、F1と耐久レースの両方で実績を残したブレンドン・ハートレーなど、世界で戦うドライバーを輩出してきた国です。その系譜に連なる存在として、ローソンには母国の期待も集中しています。昇格と降格を短期間で経験した異例のキャリアは、本人にとって辛い出来事だったはずですが、F1という世界で生き残るための貴重な糧となっているはずです。今後の走りから目が離せないドライバーの一人といえるでしょう。