夏が深くなるころ、フィラデルフィアとアトランタのファンは、自分のチームの試合結果と同じくらい熱心に、もうひとつのスコアを確認する。今夜、地区のライバルは勝ったのか、それとも落としたのか。
フィリーズ対ブレーブスという組み合わせには、そういう視線が集まる。両者が同じナショナル・リーグ東地区にいるという、ただそれだけの理由で。
地区の頂点を、ふたりで分け合ってきた
1990年代、ナ・リーグ東はブレーブスの独壇場だった。1991年から2005年までの間に、アトランタは14度地区の頂点に立っている。投手力で試合を組み立て、若手を育てながら長く強い期間を保つ。あの時代のブレーブスは、地区優勝が「目標」ではなく「前提」になっていた。
その壁に最初に穴を開けたのがフィリーズだった。2007年から2011年まで5年連続で地区を制し、2008年にはワールドシリーズまで到達する。フィラデルフィアの街が、四半世紀ぶりの頂点に沸いた年である。
つまりこの地区は、長いあいだ「どちらか一方が上に立つ」構造を繰り返してきた。だからこそ、両者が同時に強くなったシーズンは、他地区のファンには想像しにくいほどの緊張感を生む。
つくり方が、正反対に近い
両チームを並べると、その性格の違いがはっきり見える。
ブレーブスは、内部で育てて長く使うことを大切にする。ロナルド・アクーニャ・ジュニア、オジー・アルビーズ、オースティン・ライリーはいずれもアトランタで育ち、チームの骨格になった。マット・オルソンのように外部から迎える選手もいるが、基本線は「積み上げる」野球だ。
フィリーズは、街の気質もあってか、勝負に出る場面が多い。ブライス・ハーパー、トレイ・ターナー、ザック・ウィーラー、アーロン・ノラ。名前を並べるだけで、その年の本気度が伝わってくる。本拠地シチズンズ・バンク・パークの音圧はリーグ屈指で、相手投手にとっては打席に立つ前から試合が始まっているような感覚があるという。
継続で勝つチームと、勝負に出て勝つチーム。同じ地区で、狙う頂点はひとつしかない。
2020年代に入って、この関係はもっと濃くなった
近年のナ・リーグ東は、両者が同時に強い状態が続いている。2021年にはブレーブスが世界一に立った。翌2022年、フィリーズは最後の枠から這い上がるようにポストシーズンへ入り、リーグ優勝まで駆け上がる。
象徴的だったのは2023年だろう。ブレーブスは104勝を挙げて地区を制し、球団史上でも屈指のシーズンとして記憶された。ところが地区シリーズで、その前に立ちはだかったのはフィリーズだった。レギュラーシーズンの勝ち数が、10月の3試合を保証してくれない——この地区で戦う者たちが、いちばんよく知っている現実である。
観るときに、どこを見ればいいか
この組み合わせを観るなら、まず先発投手の対比に注目したい。フィリーズはウィーラーやノラのように、試合を長く持たせるタイプが揃う。対するブレーブスは、アクーニャ・ジュニアを筆頭に、走者が出れば一気に揺さぶってくる。細かい制球で抑え込むか、足と長打で畳みかけるか。序盤の2イニングで、その日の勝敗の傾向がおおよそ見えてくる。
打線では、ハーパーの打席が特別な空気をまとう。ポストシーズンで彼が打つときの球場の沸き方は、レギュラーシーズンの数字だけでは説明できない。逆にブレーブス側は、オルソンのような一発で流れを変える打者を軸に、得点の波を作る。
そして忘れてはいけないのが、このカードが9月に組まれたときの意味だ。直接対決の結果が、そのまま地区の順位表を動かす。他の試合を気にしながら見る野球は、数字を追うだけの楽しみ方とは少し違う种类の面白さがある。
憎しみ合っているわけではない
ヤンキースとレッドソックスのように、歴史的な遺恨が物語を駆動する関係ではない。フィリーズとブレーブスのあいだにあるのは、もっと静かで、もっと直接的なものだ。勝ち方を知っている者同士が、同じ地区で、同じ頂点を狙っている。
相手を認めている。だから負けたくない。その距離感は、長いシーズンを追うファンほど実感しやすい。
地区優勝争いが混戦になったとき、この2チームの直接対決は、順位表の上では「3試合」にしかならない。だが、その3試合を終えたあとに残る空気は、シーズンの終わり方まで変えてしまうことがある。フィリーズとブレーブスを観るというのは、そういう体験だ。