配当とは、企業が事業で得た利益の一部を、株主に分配することを指します。株式を保有していると、その会社の業績が良ければ、保有している株数に応じてお金を受け取ることができる仕組みです。これは「利益還元」の一つであり、企業が株主に対して感謝の気持ちを示し、今後の支援をお願いする意味合いも含んでいます。
企業には利益の使い道がいくつかあります。将来の設備投資や研究開発に回す、内部留保として蓄える、自社株を買い戻す、そして配当として株主に還元するといった選択肢です。どのくらいを配当に回すかは、企業の経営方針によって大きく異なります。毎年安定して配当を出す会社もあれば、業績に応じて配当を増減させる会社もあります。
配当にはいくつかの種類があります。一般に「配当金」と呼ばれるのは期末配当で、決算期ごとに支払われます。多くの企業は年1回決算ですが、一部の企業は中間配当を行い、年2回に分けて株主に還元することもあります。
また、会社の創業記念や節目の年に、通常の配当に上乗せして支払われる記念配当や特別配当というものもあります。これらはその年の限定で支払われる臨時的な配当であることが多いため、投資判断の際には慎重な見方が必要です。
配当を受け取るためには、所定の株主確定日(基準日)までに株式を保有している必要があります。日本では多くの企業が3月決算で、期末の基準日は3月31日です。この日までに株主名簿に自分の名前が載っていなければ、配当を受け取る権利は発生しません。
株式の売買には「受渡し」という仕組みがあり、基準日の2営業日前までに買い付けを完了させる必要があります。この日を「権利付き最終日」と呼びます。逆に、権利付き最終日の翌日は「権利落ち日」で、この日以降に株を買ってもその期の配当は受け取れません。つまり、配当を狙って株を買うなら、権利付き最終日までに購入を済ませる必要があるということです。
実際の配当金の支払いは決算から少し後になります。3月決算の企業であれば、6月ごろに配当金が振り込まれるのが一般的です。中間配当を行う企業の場合、中間の基準日は9月30日、支払いは12月ごろというケースが多いです。
配当金の受け取り方は、証券口座の設定によって異なります。銀行口座への振り込みを選択していれば指定口座に入金されます。配当金領収証を受け取る方式を選んでいる場合は、郵送される書類を金融機関に持ち込むか、オンラインで手続きします。最近は、証券会社での配当金の自動受け取りサービスを利用する人が増えています。
投資判断でよく使われるのが「配当利回り」です。配当利回りは、株価に対する配当金の割合を示す指標で、以下の式で計算できます。
配当利回り(%)= 1株あたりの年間配当金 ÷ 株価 × 100
例えば、株価が3,000円の会社が年間で1株あたり90円の配当を出している場合、配当利回りは3%になります。銀行預金の金利が低い時代が続く中、この3%という数字を見て魅力的に感じる方もいるでしょう。
ただし、配当利回りは株価の変動によって数字が変わります。株価が下がれば利回りは高くなり、上がれば利回りは低くなります。そのため、利回りが高いからといって必ずしも良い投資先とは限りません。利回りだけで判断するのは危険です。
配当を受け取る際には、税金についても理解しておきたいポイントです。配当金は「配当所得」として扱われ、原則として所得税と住民税がかかります。上場株式の配当の場合、現行の税制では所得税15.315%、住民税5%が源泉徴収され、合計20.315%が差し引かれた金額が振り込まれます。
また、確定申告の際には「総合課税」か「申告分離課税」のどちらかを選択できます。ほかの所得と合算して税率を計算する総合課税を選ぶと、配当控除が受けられる場合があります。一方、申告分離課税は配当以外の所得と分けて計算する方法です。どちらが有利になるかは、ほかの所得金額や株式の売却損の有無によって変わります。
例えば、株式の売却損が発生している場合は、配当と損益通算できることがあります。このようなケースでは、状況に応じて申告の方法を選ぶことが賢明です。初めての方は、税理士や証券会社の相談窓口を活用するのも良いでしょう。
なお、NISA口座で保有する株式の配当金は非課税になります。ただし、配当金を証券会社の口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選択している必要があります。受け取り方法によっては非課税の対象にならないこともあるため、事前に証券会社の案内を確認しておきましょう。
配当と合わせて話題になるのが「株主優待」です。株主優待は、企業が株主に対して商品やサービス、割引券などを提供する制度です。配当が現金での還元なのに対し、株主優待は現物の特典である点が大きな違いです。
企業によっては、配当と株主優待の両方を提供しているところもあり、投資家から根強い人気を集めています。ただし、株主優待は企業側の任意の制度であり、内容が変更されたり、廃止されたりすることもあります。配当とは別の仕組みとして理解しておくことが大切です。
配当投資にはいくつかの注意点があります。まず、配当は必ずもらえるわけではないという点です。企業の業績が悪化し、赤字が続けば配当を減らす「減配」や、配当を支払わない「無配」に転落する可能性があります。過去に高配当だった会社が、業績悪化によって一転して無配になる例は実際にあります。
また、高配当の銘柄は、市場から何らかの理由で割安に評価されていることが多いです。業績が伸びていない、将来の成長が見込めない、事業リスクが高いといった理由から株価が低迷し、結果として利回りだけが高くなっているケースがあります。配当利回りが異常に高い銘柄は、その理由をしっかり調べることが大切です。
配当を継続的に支払える企業かどうかを見極めるには、以下のようなポイントを確認すると良いでしょう。
- 過去数年、配当が安定しているか、増配を続けているか
- 売上高や利益が安定して成長しているか
- 自己資本比率が十分にあるか
- 営業キャッシュフローがプラスか
- 無理に借金をして配当を出していないか
こうした視点を持つことで、単なる利回りの高さに惑わされず、長期的に配当を受け取り続けられる企業を選べるようになります。
ここまで配当の基礎について解説してきました。配当は企業の利益を株主に還元する仕組みであり、受け取るためには基準日までに株式を保有する必要があります。利回りは「1株あたりの年間配当金 ÷ 株価」で計算でき、上場株式の配当には原則20.315%が源泉徴収されます。
配当投資を始めるなら、まずは業績が安定している企業を調べるところから始めましょう。利回りだけで選ぶのではなく、配当を出し続けられる会社なのかを見極めることが、長く安心して投資を続けるコツです。配当の知識をしっかり身につけて、自分に合った投資方法を見つけてください。