深夜のコンビニで、あのプラスチックのトレイを選んでしまう理由

深夜のコンビニエンスストア。蛍光灯の白い光が並ぶ棚の前で、ふと手が伸びる。お腹が空いていないわけでもないが、ガッツリとした定食を食べるほどの気力もない。そんな曖昧な時間帯に僕らが選ぶのは、決まってあのプラスチックのトレイだ。
フィルムを剥がし、乾燥した麺の塊を取り出す。ここからが、この商品に込められた「体験」の始まりだ。お湯を注ぎ、三分待つ。そして、あの独自の湯切り穴からお湯を捨てる。
この小さな穴の登場は、焼きそばという食べ物の常識を静かに、しかし確実に書き換えた。それまでザルに移すか、器ごと逆さにして火傷のリスクと戦っていた行為が、トレイの上で完結するようになった。蓋を半分開け、湯気を立てながらお湯を切る。最後にトレイを軽く振って水気を飛ばす。この一連の動作には、なぜか達成感がある。自分自身の手で、完成形へと導いているという感覚だ。
付属の液体ソースを回し入れ、再びよく混ぜる。ペヤングの代名詞である、あの独特の酸味とスパイシーさが立ち上る。
正直に言えば、この味は万人向けではないかもしれない。上品な甘さや、深みのある複雑な味わいを求める人にとっては、少し刺激的で、甚至有些細いと感じることもある。だが、そのシャープな酸味こそが、深夜の疲れた胃と神経を優しく起こしてくれる。ウスターソースをベースにしたその味は、どこか懐かしく、同時に「今、自分が食べている」という強烈な実感を与えてくれるのだ。
もう一つの魅力は、それが極めて「余白」の多い食べ物である点だ。
完成された高級料理は、それ以上手を加えることを許さない。しかし、あのトレイの上は違う。マヨネーズをたっぷり絞ってもいいし、チーズを溶かしてもいい。青海苔を振りかけ、紅しょうがを添えれば、祭りの日の屋台の気分も味わえる。卵を落とす人もいれば、最後の一滴までソースをご飯に絡ませて食べる人もいる。
食べ手がそれぞれの気分に合わせ、自由に味を調整できる。ペヤングは、ただのインスタント食品ではなく、僕らの食卓におけるキャンバスのような役割を果たしている。
外食チェーンの焼きそばは、均一で完璧な味を提供してくれる。しかし、それらはあくまで「与えられた味」だ。
一方、あのプラスチックのトレイで食べる焼きそばは、自分の手でお湯を切り、自分の手でソースを絡め、自分の好みのトッピングを加えて完成する。
僕らがあの安価なトレイを手に取るのは、単にお腹を満たすためだけではない。あの酸っぱい香りと、湯切り穴から立ち上る湯気に包まれて、自分だけの「ちょうどいい味」を作り上げる時間。それこそが、僕らがあのトレイを振り続ける本当の理由なのかもしれない。

Source: HotArticle

Original link: https://www.hotarticle24.com/2f9o7vx0

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